相続・遺言・成年後見・事業承継

相続とは - 相続の承認と放棄

相続は死亡という事実により開始します。不動産や預貯金等の財産に対する権利や借金や保証等の義務は、相続人が包括的に承継することになります。但し、相続人は相続に際し次の三つの中からいずれか一つを選択することができます。

【1.単純承認】
亡くなられた方の権利義務を承継することを全面的に承認すること。
権利の方が義務よりも大きいことが明らかな場合に選択されるとよいでしょう。

【2.放棄】
亡くなられた方の権利義務を承継することを全面的に否認するすること。
義務の方が権利も大きいことが明らかな場合に選択されるとよいでしょう。

【3.限定承認】
亡くなられた方の権利の範囲内で義務に対する責任を負担するというように承継を限定的に承認すること。換言すれば、権利の方が義務より大きい結果が出た時は、そのまま権利義務を承継でき、逆に義務が大きいという不利な結果の時は、権利義務の差額のマイナス分の責任を負わなくて済む、という形で承認すること。
権利と義務のどちらが大きいか明らかでない場合に選択されるとよいでしょう。

いずれを選択するにしましても、死亡の事実と自らが相続人となったことを知った時から3ヶ月以内に選択する必要があります。選択をしないまま3ヶ月を過ぎてしまいますと、期間伸長の承認が得られない限り上記1の単純承認となってしまいます。ただし、具体的な事情により3ヶ月過ぎても相続放棄できる場合がありますので、あきらめずにご相談ください。


以下のご要望、お任せください

・相続の放棄や限定承認をしたい。
・遺言書の内容を実現してもらうために遺言執行者を選任してもらいたい。
・遺産分割の協議がまとまらない。
・遺産分割につき特別代理人を選任してもらいたい。
・相続人の一人が認知症で遺産相続の協議ができない。
・遺言書の内容が納得できないので、最低限の取得分を確保するため遺留分減殺請求をしたい。
・相続人がいないので相続財産管理人を選任したい。
・相続人の一人に行方不明者がいるので、遺産相続を進めるため不在者の財産管理人を選任したい。

もちろん、その他のご要望についても対応いたします。  

法定相続による不動産登記の場合

※具体的事案により必要書類が増えますことをご留意ください。
※当事務所はオンライン申請に対応しているため、登録免許税を10%(最高5,000円)安くできます。
 登記簿謄本も1通700のところ、570
円もしくは550円で取得できます。インターネット登記情報を活用すれば1通397円で即時に取得でき、中でも所有者事項であれば1通147円で取得できます。
・被相続人(亡くなられた方)の子もしくは兄弟姉妹が相続開始前に既に亡くなっていた場合は、子の子もしくは兄弟姉妹の子(被相続人からみれば孫もしくは甥、姪)が亡くなった子もしくは兄弟姉妹に替わって相続人となります。
・被相続人の出生まで遡った戸籍謄本、原戸籍、除籍謄本及び被相続人の住民票除票(本籍・続柄の入ったもの)が必要。登記簿上の住所と本籍地が異なれば戸籍の附票等が必要となります。
・他に相続人の戸籍謄(抄)本、住民票(本籍・続柄の入ったもの)が必要。相続財産である土地建物の評価証明書が必要。戦災、震災等で戸籍がつながらない時は上申書を作成します。


相続による不動産登記はいつまでにするべきか。

相続税については不動産の名義人が亡くなられてから原則10ヶ月以内に申告しなければなりませんが、相続による不動産登記については期限が法律上強制されているわけではありません。
 しかし、そのまま放置しておくのは得策とは言えないでしょう。例えば、相続人間で不動産の承継者につき大体の暗黙の合意があれば、それを土台に正式な協議を開始し、確固たる合意に基づき速やかに承継者へ不動産の名義を移すべきでしょう。それを放置しておくと、場合によっては各相続人独自の予想できない家庭事情等が生じ、当初の暗黙の合意が消滅してしまうことも考えられます。そういう事態というのはかえって紛争となってしまう可能性もあるでしょう。
 また、そのまま放置を続けると、その相続人に新たな相続が発生し、相続についての協議をする当事者が次々と増えていく可能性があります。当事者が増えれば、手続きがより複雑となり、協議をまとめるのもその分大変となるでしょう。ましては面識がより薄い当事者間での話し合いとなれば協議が長期化し、あげくの果て裁判所での争いとなってしまう可能性も全く否定することはできないでしょう。
 相続人全員が仲良く円満な充実した協議をし、まとまったら速やかに相続による不動産登記を完了させ、承継者を確定させておくことが、相続人全員にとっての円満解決となるのではないでしょうか。

遺言

※ただいま遺言についての相談は無料で承っております。
■1、遺言の意義
遺言は、遺言者の意思を書面に残すことによりその最後の意思を明確にしておくことを目的とします。遺言がなければ遺言者の意思があったにもかかわらず、遺産は法の定めに従い分配されます。遺言がないために、特定の相続人にとってあまりにも酷という結果を招くことすらあります。そのようなことのないように、家族を取り巻く実情などを配慮し、遺言者自らの意思によって、法の定めに修正変更を加えるのが、遺言です。遺言は、大切な遺族へのおもいやりであり、遺産争いにより遺族間の結束を決して壊してはならないという遺言者の気持ちの表れです。遺言は、長い間愛着をもって抱えてきた自己の財産の行方を死後においても自らの意思で決定づける最後の言葉です。意識がしっかりしているうちに、どうしておきたいかをじっくりお考えになり、自らの意思を遺言書として明確にしておくことは、大切なことではないかと思います
■2、遺言が必要となる具体例

父に隠し子がいる場合

父に隠し子が仮にいる場合、父はその子とは縁が切れていると勘違いし、亡くなるまで隠し続けることもありえます。遺言があればその隠し子の署名捺印なしで、遺産すべてを移すことが可能です。遺留分はその後の権利。

妻が亡き夫の両親の面倒見ている場合

夫が亡くなった後も、その亡夫の妻が同居している亡夫の両親を長年の間面倒を見ている場合、それがどんなに大変でも、亡夫の妻は亡夫の両親の相続人にはなれません。そこで、遺言により両親が所有している財産を亡夫の妻に承継させることができます。ただし、遺留分に注意が必要です。

相続人がいない場合国庫に帰属

遺言者(遺言を検討されている方)に相続人がいない場合、遺言者の遺産は国庫に帰属してしまいます。遺言者を現在大切にしてくれる方、あるいは死後においても手厚く供養をしてくれるお寺等、その方たちのために感謝をこめて遺言を残しておいてはどうでしょうか。そのような方たちですからさらに大切にしてくれるのではないでしょうか。

遺言者に子ができず、財産が居住不動産だけの場合

遺言者は婚姻しているが子供ができず、財産は居住している土地と建物だけの場合、遺言者の両親が亡くなられていれば、相続人は遺言者の兄弟姉妹と妻になります。相続の際、愛着のある居住の土地建物は売却されるか、売却しないで居住を維持するには妻が兄弟姉妹に高額な金銭を支払うことになりかねません。遺言を残しておけば、その土地建物における妻の居住場所を確保することができ、妻に高額な金銭を負担させないことができます。

会社を長男に承継させたい場合

社長が亡くなられたとき、特に社長が一人株主の零細企業の場合、会社の所有者や経営者につき相続人間で協議が速やかにまとまらないと、間断なく継続している事業に支障をきたし、信用を失う可能性があります。協議が長期化すると企業にとって危険です。相続という重大事に備え、企業の円滑で迅速な承継を実現するために、遺言で承継者を決めておくことは企業にとって重要なことだと思います。

相続人に行方不明者がいる場合

相続人の中に行方不明者がいる場合、遺言者が亡くなられ相続が開始すると家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう必要が出てきます。不在者財産管理人は、行方不明者の権利を守るため法定相続分を確保しようとします。このような複雑で手間がかかることを事前に防ぐために遺言を活用することができます。

別居の妻と同居の内縁の妻がいる場合

別居の妻とは長期間婚姻関係が破綻している一方、内縁の妻とは婚姻生活を送り事実上の夫婦となっていても遺言者の相続人はあくまで別居の妻であり、内縁の妻ではありません。大切な内縁の妻のことを慮れば遺言が必要になるでしょう。

以上の他、遺言が必要なケースというのはさまざまな場合があります。税金対策も含め具体的情況から何がもっとも必要な遺言なのか個別的に検討する必要があります。ただいま遺言についての相談は無料で承っております。

事業承継

★事業承継においては代表者の承継のみならず株式の承継も重要です。自社の株式も相続の対象となり将来的に相続人全員tが株式の共有者となり株主となるからです。事業会社を支配するのは代表者ではなく株主です。代表取締役たる代表者は取締役たる役員を土台に成立するものであり、その土台たる役員を選任したり解任するのは株主総会を構成する株主です。自社株式の承継をどのようにするか、遺言等による適切な対策が必要です。

★株式の承継については、例えば、株主総会での議決権行使に大きな権限を持つ株式と議決権の無い株式を事前に定款にて設定しておいて、遺言により承継者に会社支配を可能にするように振り分けることができます。これにより遺留分(※1)対策と税金対策が可能となります。

★会社にとって好ましくない者が株主として会社内部に入り込むのを阻止するため株式の自由譲渡性に制限を加えたり、好ましくない相続人を事前に廃除できるようにしたり、その他定款変更等により事業承継対策を講じることが可能です。

★事業承継における遺留分対策としては、平成20年に5月に成立した円滑化法(※2)を活用して承継者に自社株式を生前贈与する方法もあります。承継者への生前贈与は、他の相続人からすれば、相続の場面において遺留分を侵害することになりかねません。他の相続人は遺留分侵害を阻止するために遺留分減殺請求権を行使して、承継者への生前贈与を台無しにしようとするかもしれません。そうなれば事業の承継者をめぐる紛争等の問題が生じ、事業承継に大きな支障が生じるのみならず事業自体が打撃を受けるかもしれません。このようなことにならないで、生前贈与を無意味としないためには円滑化法を活用する必要があります。そうすれば他の相続人の遺留分減殺請求権を阻止することができます。ただし、事前に承継者以外の相続人を含めた相続人全員の合意と、経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可の手続きが必要となります。

★個人事業の場合、個人事業者が亡くなられると当然に個人事業も消滅してしまいます。今までの努力と工夫で築き上げてきた企業財産及び社会的信用も消えてしまいます。事前に個人事業を株式会社等の会社組織にして個人事業者を会社の代表者にしておれば、個人事業者(会社の代表者)が亡くなられても代表者を承継者に変更すればよいことになります。もちろん自社株式の承継についての対策も必要ですが、個人事業のスムーズな承継を可能にすることができます。

★代表者が高齢で判断能力が衰えたことにより成年後見制度を利用し後見人や保佐人がつきますとその代表者は会社法331条により代表者の地位を退任せざるを得ません。遺言や任意後見契約を活用することにより、事前に事業承継対策を決めておくとよいでしょう。

※1 遺留分とは、遺言によっても排除することができない相続人に与えられた最小限度の相続承継分のことです。
※2 円滑化法とは、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律のことです。

成年後見

誰でも歳をとれば判断能力・身体能力が衰えてしまいます。とくに最近は、60歳未満の若年層の認知症が急増しており、皆さんも多くの不安を抱えておられるのではないでしょうか。
成年後見制度は痴呆等で判断能力が低下してしまった人を保護・支援する制度で、介護保険制度とともに、安心して老後をすごすための高齢化社会になくてはならない制度です。  

当事務所においては、直接対応する司法書士は、社団法人成年後見センター・リーガルサポートの会員でありながら、家庭裁判所が後見人として選ぶ名簿に登載されている司法書士です。
成年後見制度をどのように活用するかは大事なことなので、懇切丁寧に説明し、ご意向を時間をかけてお尋ねしております。

 成年後見制度には、既に判断能力が低下し不十分となった方のための法定後見と将来判断能力が不十分となる前に事前に準備するための任意後見との2種類があります。

法定後見

定後見とは、本人が既に判断能力が低下し不十分となり、自己の単独の判断では十分な行為ができなくなった場合に、家庭裁判所が、後見開始等の決定を行い、本人を法律的に保護しサポートするための制度です。例えば次の場合に必要となります。
★本人が相続人である場合、遺産相続を進める上で本人を含め相続人全員で協議をする必要がありますが、本人の判断能力が全くない場合は、本人に不利益な結果を惹き起こす危険性があります。本人に代理人をつければよい様に思えますが、本人に判断能力が無い以上代理人に対する委任の意思は形成されることはありえないので代理人を付けることもできません。従ってそのままでは、遺産相続を進めることはできません。そこで、法定後見制度を活用すれば、家庭裁判所判が本人のために後見人等を選任し、家庭裁判所の監督の下、遺産相続を終結させることができます。
★本人の不動産を本人の生活のために売却をする必要がある場合でも、本人に判断能力がないときは、売却することはできません。上記★の遺産相続の場合と同様に代理人をつけることはできず、本人不動産を売却するためには法定後見制度を活用する必要があります。

法定後見には、本人の判断能力の程度に応じて、後見保佐補助の3つの類型があります。
後見とは、本人が精神上の障害により、判断能力(物事の道理をわきまえる能力)を欠く状況が常である場合に適用される制度で、家庭裁判所は本人のために後見人を選任します。後見は、法定後見の3つの類型の中では、本人の判断能力の低下の点で、最も重い場合です。
保佐とは、本人が精神上の障害により、判断能力が著しく不十分な状態が常である場合に適用される制度で、家庭裁判所は本人のために保佐人を選任します。保佐は、法定後見の3つの類型の中では、判断能力の低下の点で、後見よりも軽く補助より重い場合です。
補助とは、本人が精神上の障害により、判断能力が不十分な状態が常である場合に適用される制度で、家庭裁判所は本人のために補助人を選任します。補助は、法定後見の3つの類型の中では、判断能力の低下の点で、最も軽い場合です。


任意後見

任意後見とは、将来判断能力が低下し不十分となる前に意識がはっきりしている内に準備するための制度です。法定後見においては、本人を法律的に保護しサポートする後見人等は、家庭裁判所が選任しますが、任意後見においては、本人自ら信頼した者を任意後見人としてあらかじめ決めておくことができます。身体的に不自由になった後に介護をお願いする介護事業者や介護老人施設はどこがよいか、ヘルパーに対する希望をどうするか、入院が必要な事態になったらどこの病院がよいか、医師はどなたを希望するか、その他自らの意思によって、老後の生活プランを決めておくことができます。
また、任意後見は、本人の判断能力が不十分になったときに、本人の同意の下、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することにより、開始されます。従って、本人を法律的に保護しサポートする任意後見人は、家庭裁判所による監督だけにとどまらず任意後見監督人による厳重な監督を受けることになります。本人にとっては安心して任意後見制度を活用できるようになっております。


相続登記の必要性

法定相続分のままで満足される場合も、相続人間で法定相続分とは異なる協議が成立した場合も、不動産の遺産相続を完了させるためには、被相続人名義の不動産を相続人名義に移すという登記手続が必要となります。また、相続人間の協議が成立した場合、相続人当事者はそのことを知っていますが、第三者は当然にそのことを知りうるものではありません。そこで、土地・建物等の不動産の権利を公示して第三者が知りうるようにするために登記というものが必要になります。
 例えば、相続人間の協議が成立したとしても、そのまま登記しないで放置した場合、次のような危険性があります。
 相続人がA及びBの二人だとします。AとBとの間でAが不動産を単独承継するという協議が成立したとします。にもかかわらずBが気持ちを変え、協議によりAに移っていたはずのBの法定相続分2分の1の権利を第三者であるCに売却したとします。ここで、Cへの売却の登記がAへの単独の相続登記よりも先に登記が完了しますと、Aはせっかく単独承継したと安心していた不動産の2分の1の権利をCから取り戻すことができなくなります。
 このようなことのないように、相続登記手続きは、速やかに完了させておくことが大事です。
ちなみに、相続税の申告は亡くなられてから原則10ヶ月以内に申告しなければなりません 当事務所では相続税についての相談は無料で承っております。是非お気軽にご利用ください。必要の場合、提携した税理士を紹介いたします。  

法定相続以外による不動産登記の場合

※具体的事案により必要書類が増えますことをご留意ください。
※当事務所はオンライン申請に対応しているため、登録免許税を10%(最高5,000円)安くできます。
  登記簿謄本も1通1000円のところ700円で取得できます。5通で1500円安くなります。

s4遺産分割、特別受益証明、相続分譲渡による取得の場合

●承継する相続人の住民票、相続人全員の印鑑証明書が必要(期間制限無し)です。 相続人全員が遺産分割協議書に実印を押印します。

特別受益証明書、相続持分譲渡書については承継しない相続人の実印の押印が不可欠です。その他用意するものは法定相続の場合と同じ。なお未成年の子と配偶者がいる場合、遺産分割、相続分譲渡による場合は利益相反行為として特別代理人選任が必要ですが、特別受益証明の場合は事実関係証明に付き不要です。

相続財産を取得しない者の相続放棄手続きにより取得する場合

●家裁による相続放棄受理審判が不可欠となります。その他は同じです。

公正証書遺言により取得する場合

●公正証書遺言書の謄本及び被相続人の死亡時の戸籍(除籍)謄本、相続人の戸籍抄本、住民票、評価証明書が必要です。

審判書、調停調書により取得する場合

●審判書正本及び確定証明書、調停調書の正本が不可欠となります。

家督相続、遺産相続により取得する場合

●戦後民法は改正されましたが、改正前の旧民法による相続のことであり、戸主の死亡・隠居等により相続される場合が家督相続、それ以外が遺産相続になります。遺産相続の場合は子全員を調査しなければならないので、手続き的にかなり煩雑になります。  

遺言(補足)

父に隠し子がいる場合

妻との間の娘(以下Aとします)がいて、父は先妻と離婚し、後妻と婚姻し、その後Aが婚姻して籍を外したため 、父からすれば、Aとは間違いなく縁が切れていると思い込みがちです。このような場合でも法律上は父とAと の親子関係は、後妻との間の子との親子関係と全く同様の関係にあります。父からすればAのことは、後妻や後 妻との間の子には知られたくないと思うのが自然の感情です。そのため今現在父と同居している後妻との間の 長男(以下Bとします)からすれば、その隠されているAの存在を知らないまま、父が亡くなってしまう可能性が あります。Bは父の全財産を承継するものと思い込んでいて兄弟姉妹もそのことを了承していたとしても、Aに も相続人としての正当な権利があり、Aの知らない間に手続きを進めることは不可能です。BにしろAにしろ面識 どころか存在すらもしらなかった同士で、しかも事情が事情なので顔すらも見たくない複雑な感情が混在する 中で、まともな協議ができるでしょうか。これは実例です。もしかしたら他人事でないかもしれません。この ような事態を回避するためには、父に遺言書を作っていただくことです。父もAと縁が切れていないことを知れ ば、遺言により意思を明確にしておきたくなると思います。遺言書があれば、Aから署名捺印と印鑑証明書をい ただかなくても、父の全財産をBに移すことができます。ただしAに遺留分(遺言によっても奪うことのできない 相続人に最低限確保された権利)は残るももの、その権利はAが行使しなければ、時効により消滅してしまいま す。遺言がない中でAと協議すればAの財産意識に火をつけることが考えられますが、とりあえず遺言執行が完 了していると、すべてにかかわりたくないと考えがちなAからすれば、そのまま放置するかもしれません。一般 的には考えがたいことも起こりえます。備えあれば憂いなしです。遺言につき、その他考えがたい落とし穴が あるかもしれませんので、早めにご相談されるとよいでしょう。

 

遺言者に子ができず、財産が居住不動産だけの場合

法定相続においては、第一順位の相続人は亡くなられた方の子で、第二順位の相続人は亡くなられた方の両親 で、第三順位の相続人はなくなられた方の兄弟姉妹となります。遺言者が亡くなられますと、居住していた土 地及び建物は、第1順位の子と第2順位の両親がいないケースなので、法定相続によって妻が4分の3、第3順位の 兄弟姉妹が全員で合わせて4分の1の割合で相続します。兄弟姉妹は、同居している等の事情がない限りその建 物に居住することを通常は望まないでしょう。居住を望まない兄弟姉妹は、土地と建物の評価に対する4分の1 の金額を妻に請求することとなるでしょう。土地と建物の評価に対して3分の1相当の預貯金が別途遺産として 残っていれば、その預貯金は遺産全体からすれば4分の1 (3対1なので) に該当しますので、その預貯金を兄弟姉妹が相続することにすれば、妻にとって金銭の負担なし で居住場所を確保することができます。しかし、遺産は居住している土地と建物のみですから、そのようなこ とはできず、妻が遺産の4分の1相当の大金を自腹で支払うか、そのような大金がない場合には、その土地と建 物を売却して、換価金から支払わざるを得ません。大切な妻が苦しい情況に追い込まれるのは、遺言者にとっ て耐え難いことでしょうし、また自ら長年居住してきた土地建物が第三者のものとなることは、死後とはいえ 悔しく虚しいことではないでしょうか。このような場合にこそ遺言というものがあります。遺言者の愛着のあ る財産を知らない他人に手放すことなく、また大切な妻の居住場所を確保することができます。このケースの 場合遺留分の心配もありません。

 

別居の妻と同居の内縁の妻がいる場合

法律上婚姻するには婚姻意思とその届出が不可欠で、その要件を満たして初めてお互いに法律上の配偶者とな り、一方が亡くなられると他方が相続人となります。従って、たとえ婚姻意思に基づき同居生活をするなどし て事実上夫婦同様の生活をしていたとしても、婚姻の届出をしていない内縁関係に留まるときは、一方が亡く なられても他方は相続人となることはできません。逆に一旦婚姻意思に基づき婚姻の届出をした法律上の配偶 者は、たとえ別居中で離婚状態にあっても離婚をしない限り一方が亡くなられたときに他方が相続人となりま す。したがって、別居中の配偶者が遺産目当て等の理由で離婚してくれない場合が出てきます。そうすると、 わが民法は婚姻している者が離婚をしないで重ねて他の者と婚姻することを禁止していますので、同居してい る内縁の妻と婚姻することができません。つまり、自分の遺産を内縁の妻に相続させることができないという 事態が生じてしまいます。このようなときにも遺言が重要な意味を持ちます。大切な内縁の妻が満足できるよ うな遺言を残すことによって、自己の死後においても安心していられるようにすることができます。ただし、 遺言が遺留分による制約を受けることに注意しましょう。

遺言の効力

★ 遺言は遺言者の最終意思を明確にすることを目的と しますが、あらゆる意思が遺言として効力を有するとは限りません。
せっかく作って安心していても効 力がない故にすべて無効ということもありえます。
無効とならず効力を持った遺言とするためには次の 点に注意するべきです。

1.満15際に達した者でないと遺言をするこ とはできませんのでそのような遺言は無効となります。精神機能の障害により意思能力を欠く者の遺言も無効 となりま す。認知症等の高齢者の遺言は、遺産相続の際に遺言無効確認の訴えにより争いになる可能性があり ます。詐欺や脅迫によって遺言を作るように誘導された場合 は、その遺言は取消して無効とすることができま す。遺産となる二筆の土地を誤ってあべこべに相続させてしまう遺言など重要な部分に錯誤がある遺言も無効 と なります。以上のような無効となる遺言にはその効力はないことに留意する必要があります。

2.上記1のような無効の遺言でなければどのような内容の遺言も効力がある、 ということではありません。遺言が効力を持つためには法定された事項の範囲内にお いて遺言内容を決めなけ ればなりません。遺産相続の際の各相続人の持つ法定相続分とは違った相続分を遺言書において指定すること や遺産たる各土地の分割方 法を遺言書において指定することはできますが、相続分ではなく相続人自体を指定 (相続人以外の第三者に対する遺贈とは異なる)したり、遺留分(相続人に最 低限保障された権利)を指定するこ とはできません。つまり相続人や遺留分を指定した遺言は無効でありその効力はありません。    
具体的なことにつきましてはご相談いただくようお願いします。

3. 最後に遺言書の書き方に関して注意する点があります。遺言の方式の中に自筆証書遺言というものがあります が、自筆証書遺言の書き方で重要なのが、遺言内容 である文のすべて、日付及び氏名を遺言者本人が自ら書か なければならないことです。それと押印が必要です。よく日付を忘れるケースがあるようです。このい ずれか 一つが欠けてもその遺言は無効となりその効力はありません。遺言書の書き方として夫婦が連名で作った共同 遺言の形式のものがありますが、無効で効力 がないことに留意する必要があります。


★ 遺言の効力とも深い関係がありますが、遺言の方式をどうすべきかという ことを検討する必要があります。遺言には特別方式以外に普通の方式として自筆証 書遺言、公正証書遺言、秘 密証書遺言の3種類があります。

1.自筆証書遺言の長所と短所
◇長所
 ・すべて遺言者自らが手書きで作ることができる。
 ・費用を最小限に留めることが できる。
 ・秘密にしておくことができる。
◇短所
 ・遺言の内容が不明瞭ということで 無効となる恐れがある。
 ・特に専門家が関与していない遺言は上記で説明したとおりいろいろな面で 無効となる危険性を
  否定できない。
 ・秘密にしておくことや自己のみで管理するため紛失し たり発見されなかったりする可能性があ
   り、遺言書が私文書故に偽造や改ざんされる危険性がある。
 ・遺産相続の際、検認という家庭裁判所での手続きが必要となる。特に遺言の執行及び登記を
  急ぐ場合は大きな妨げとなる。

2.公正証書遺言の長 所と短所
◇長所
 ・遺言公正証書の原本が公証役場で保管されるため、紛失・未発見・偽造・改 ざんのおそれはな
  い。
 ・専門家及び証人2人が関与するので公正証書遺言が無効となり効力を有しない 結果となること
  はほどんどない。
 ・認という裁判手続きを不要とできるので、遺言執行及び 登記の妨げとなる要因を減らすことが
  できる。
 ・文字の書けない者でも遺言公正証書 の場合は可能である。
◇短所
 ・公正証書という公文書故に手続きが煩雑である。
 ・公 証役場で証人二人の立ち会いの下、手続が進められるので、公証人・証人には遺言の内容
  を秘密にす ることはできない。
 ・費用がかかる

3.秘密証書遺言の長所と短所
   (秘密証 書遺言とは、自らが作成した遺言書を公証役場でその存在を明確にし、その上で封
    印し、その 内容は秘密にしておく遺言。)
◇長所 
 ・遺言の存在だけは明らかにでき、一方その内容を秘密 にできる。
 ・遺言が公的に封印されているので偽造・改ざんの恐れがない。
 ・自筆証書遺言 のように遺言の全文を自ら書く必要はなく、署名捺印できればよい。
◇短所 
 ・公正証書遺言 ほどではないが、手続きが煩雑である。
 ・遺言の内容自体は秘密故に、前述したとおりいろいろな面 で無効となる危険性がある。 

 
☆真剣に悩んだ末決断した遺言が無効となり無意味と なることを避けようとするならば、公正証書遺言をお勧めします。当事務所では、当職及び当事務所職員が証 人となりますので公正証書遺言の証人をそろえることができます。もちろん秘密は厳守いたします。

遺産相続の基礎

遺産相続(注1)においては、相続人一人だけの場合より相続人多数の場合に相続トラブルが起こり安いといえます。その場合相続手続きもその分煩雑になり費用もかかります。相続人多数の場合にまず知っておくべきことは,相続人の順位と法定相続分です。
 注1遺産相続とは厳密に言うと旧民法下の戸主の死亡等の相続である家督相続に対応する言
   葉で家督相続以外の相続のこと。

★相続人の順位
◎第一順位の相続人 
被相続人(遺産を残してなくなられた方)の子。被相続人の養子や非嫡出子(注2)も含まれ、第一順位の相続人となります。子が被相続人より以前に亡くなっているときは代襲相続(注3)により子の子つまり被相続人の孫が相続人となります。

◎第二順位の相続人
被相続人の父母。被相続人の養父母も含まれ、第二順位の相続人となります。被相続人の父母・養父母全員が亡くなられる等によりいないときは、被相続人の祖父母が第二順位の相続人となります。

◎第三順位の相続人
被相続人の兄弟・姉妹。被相続人と異母兄弟(姉妹)や異父兄弟(姉妹)も第三
順位の相続人となります。兄弟・姉妹が被相続人より以前に亡くなっているときは代襲相続(注3)により兄弟・姉妹の子つまり被相続人の甥や姪が相続人となります。
◇第一順位の相続人が存在するときは、第二順位及び第三順位の相続人は、全員相続人となることはできず、第一順位の相続人のみが相続人となります。
◇第一順位の相続人が存在しないとき、第二順位の相続人のみが相続人となり、第三順位の相続人は全員相続人となることはできません。
◇第一順位及び第二順位の相続人が存在しないとき、この場合に限って第三順位の相続人は相続人となることができます。

◎配偶者 
被相続人の妻や夫である配偶者には順位はなく、他の相続人がどんな順位の相続人であろうと常に相続人となることができます。
  
注2 非嫡出子とは、婚姻していない男女の間の子のこと。母子関係は分娩の事実により、父子関係は認知が必要。
注3 代襲相続とは、被相続人の死亡以前に本来の相続人である子や兄弟・姉妹が死亡している場合に、その本来の相続人に代わって孫や兄弟・姉妹の子が相続すること。欠格事由の存在や廃除のため本来の相続人が相続権を失った場合も代襲相続となります。子及び孫が既に亡くなられている場合はさらに曾孫が代襲相続できますが、一方、兄弟・姉妹及びその子が既に亡くなられていても子の子つまり兄弟・姉妹の孫までは代襲相続することはできません。また、配偶者が既になくなられていてもその子は代襲相続することはできませんし、養子縁組前の養子の子も代襲相続することはできません。その他具体的なことについてはご相談ください。

★法定相続分
◎相続人が配偶者と第一順位の相続人の場合
配偶者が2分の1、第一順位の相続人が全員で2分の1となります。被相続人の子が二人いるときは、子の法定相続分はそれぞれ4分の1づつとなります。ただし、被相続人の非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の法定相続分の半分であるため、被相続人の子の内、一方が嫡出子で他方が非嫡出子とすると、嫡出子の法定相続分は12分の2となり、非嫡出子の法定相続分は12分の1となります。

◎相続人が配偶者と第二順位の相続人の場合
配偶者が3分の2、第二順位の相続人が全員で3分の1となります。被相続人の父母両名ご健在のときは、父母の法定相続分はそれぞれ6分の1づつとなります。

◎相続人が配偶者と第三順位の相続人の場合
配偶者が4分の3、第三順位の相続人が全員で4分の1となります。被相続人の兄弟・姉妹が二人いるときは、兄弟・姉妹の法定相続分はそれぞれ8分の1づつとなります。ただし、被相続人の異母兄弟(姉妹)や異父兄弟(姉妹)の法定相続分は、父母の両方が同じ兄弟・姉妹の法定相続分の半分であるため、被相続人の兄弟二人の内、一方が父母の両方が同じ兄第で他方が異母兄弟とすると、父母両方同じ兄弟の法定相続分は12分の2となり、異母兄弟の法定相続分は12分の1となります。

☆以上の法定相続分は、被相続人が生前に相続分を指定する遺言書を残している場合は、その相続分が法定相続分に優先するので、必ずしも法定相続分のとおりに遺産相続手続きが進められるわけではありません。相続人多数の場合も相続放棄する相続人が多数いれば、その分残った相続人の法定相続分が大きくなります。
また、被相続人が生前に土地を贈与しているなど特定の相続人に特別受益があるときや被相続人に対して特別の寄与があるときは、それらを勘案して法定相続分を修正変更して具体的相続分を決めることになります。その上で遺産相続手続きは遺産分割手続きへと進んでいきます。具体的なことに関してはご相談ください。